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8.文久3年10月22日 上郷・下郷の旧家臣寄合

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記事ID:0070284 更新日:2023年3月22日更新

『惣大行事日記』より)

寄合に参加した旧臣の居所

 再出府した藤四郎ですが、奉行所の対応等に変化なしと報告があります。丹下は10月8日に御社用役人の香島左仲を呼び、藤四郎の在府費用を鹿島神社の御蔵から拠出して欲しいと要請し、「大いに承知」と返事があります。ところが、会所内では、「このたびの藤四郎祢宜出府の儀、堀之内(鹿島丹下)より頼みにて出府」という認識であり、なかなか話がまとまりません。
 そんな膠着状態の中、丹下は22日に上郷・下郷の旧家臣を自宅に招いて寄合を開き、14名が出席します。寄合では帰職願い書の作成、出府人として林長左衛門が29日出立予定、入用金は当面は丹下、後々は旧家臣一同で拠出、等を決定します。
 翌日に下郷よりさらに5名が訪れ、決定事項について当祢宜に報告しますが、「社中から伺い人も出府しているし、余計な動きはかえって丹下のためにならず」との指摘を受けて、出府を見合わせます。この旧家臣寄合前後の部分をご紹介します。

原文

文久3年10月22日 上郷・下郷の旧家臣寄合 [PDFファイル/154KB]

 ※縦書きをPDFで公開しています。

読み下し文

 (十月)二十日 快晴
今日上郷・下郷旧臣一統へ廻状差し出し候。当二十二日参会(の)触れなり。村々別封にいたし遣わし候。かつ又我等より別紙相添え候分、すか市郎右衛門、塚原五右衛門、田野辺修理・中村権右衛門、居合惣兵衛、立原九郎右衛門、林長左衛門・同村庄左衛門、小見新右衛門、棚木仁兵衛。下郷は、平井三郎左衛門、木滝内蔵之助、筒井十左衛門、幡木平左衛門、塙藤左衛門。右へ別紙にて是非入来(じゅらい)くれ候様、申し送り候。人足四人にて遣わす。(後略)
 (中略)

  二十二日 雨天 昼後より止む。
上下旧臣寄り合い。上郷は、すか市郎右衛門・田の辺長岡修理・山之上権右衛門・沼尾清兵衛・居合惣兵衛・林長左衛門・小見新左衛門・立原八郎右衛門・棚木仁兵衛・塙伊右衛門。下郷は八方平左衛門・木たき内蔵之助・平井三郎左衛門・神野伊右衛門。右の通り集会なり。酒・飯振る舞い座敷にて対面。 
歎願の儀相談(に)及び候ところ一同承知、調印などの儀申し合わせ、かつ又出府人の儀は、長郷には林長左衛門受け合い申し候。入用は先ずこのたびはこの方より差し出し候筈。あと追い追い一同より骨折りの積りなり。今晩皆々泊る。ただし居合惣兵衛・沼尾清兵衛両人は今晩帰る。

  二十三日 晴
根本寺入来。今朝上郷のもの帰る。内塙伊右衛門一人残り、願書認め相渡し申し候。順村にて二十五日迄に取り揃え候積り。出府は二十九日の相談なり。
今日下郷はたき平左衛門・同甚五兵衛・平泉勘兵衛・賀村木之内右衛門・筒井七右衛門五人参り候。筒井十左衛門は病気の由なり。平井三郎左衛門・神野伊右衛門・きたき内蔵之助・山之上権右衛門等一同同席、昨日決談の儀申し聞け、扨(さて)添簡願いの儀神野へ内意聞きに、内蔵之助・三郎左衛門両人参り候ところ、神野にて申し聞かされ候は、一同願の趣尤に存じ候えども、社中より願いも出候時節、却って堀之内の御為に相成る間敷、添簡の儀差し出し候様相成る間敷く、尤もこの方ども迄一同より願書差し出し候はば、直ぐ様御奉行所へ差し上げ候様、取り計らうべき旨申し聞かされ、両人その旨承知候挨拶いたし、罷り帰り候由に付き、一同もその心得にて、両所・年番へ願い出て申す由のところ、この方心得には、左様の例これ迄これ無く、殊に入用など如何に談じられ候や計り難く候間、先ず暫く見合わせ、藤四郎祢宜帰村にも相成り候はば、その廉を以て添簡相願い、添簡差し出し申さず候はば、直願いにても苦しからざる旨一同へ申し聞け、その意に決断相成り申し候。今晩深更迄相談(に)及び候。

  二十四日 晴
今朝一同昨夜の談向きに決着に相成り、尤も願いの面は一同調印いたし置き然るべき由に相成り、下郷調印の儀は、名前のみ認め渡し候。上郷調印へ遣い合わせ候積りなり。平左衛門へ相添え遣わし申し候。その外いろいろ相談。ならびに城山開発の儀も申し聞け候ところ、一同相違これ無き旨なり。一同タ七ッ時頃退席す。神野へ三郎左衛門・内蔵之助両人出、御理解になづみ先ず暫く見合わせ申すべき旨に申し出候ところ、承知の挨拶なり。
  二十五日 晴
神酒献ず。
一、今朝上郷へ廻状。談向き相違の儀申し遣わす。林長左衛門へは手前より別紙遣わす。山之上権右衛門へも書面にて、端午の節手違いの事など申し送り候。塙伊右衛門へも書面相添え申し候。人足二人にて廻状二通にいたし遣わす。

現代語訳

 (10月)20日 快晴
 今日、上郷・下郷の旧家臣一同へ廻状(回覧して読む文書)を差し出した。当月22日に参会するようにとの知らせである。村ごとに別封にして遣わした。また、私より別紙を添えた分を、
(上郷は)、
・須賀(村)市郎右衛門(新野辺氏)
・塚原(村)五右衛門(塚原氏)
・田野辺(村)修理(長岡氏)
・中村権右衛門
・居合(村)惣兵衛
・立原(村)九郎右衛門
・林(村)長左衛門
・林村庄左衛門
・小見(村)右衛門
・棚木(村)仁兵衛
下郷は、
・平井(村)三郎左衛門
・木滝(村)内蔵之助
・筒井(村)十左衛門
・下幡木(村)平左衛門
・下塙(村)藤左衛門
 以上の者には別紙にて「是非お出で下さい」と書いて送った。人足4人で遣わす。(後略)

(中略)

  22日 雨天 昼後より止む。

 上下旧臣寄合。上郷は、
・すか(須賀村)市郎右衛門
・田の辺(村)長岡修理
・山之上(村)権右衛門
・沼尾(村)清兵衛
・居合(村)惣兵衛
・林(村)長左衛門
・小見(村)新左衛門
・立原(村)八郎右衛門
・棚木(村)仁兵衛
・内塙(塙村)伊右衛門
下郷は、
・八方(鉢形村)平左衛門(長塚氏)
・木たき(木滝村)内蔵之助
・平井(村)三郎左衛門
・神野(村)伊右衛門(小野氏)。
 以上が集まり集会を開く。酒・飯を振る舞い座敷にて対面した。 
 惣大行事への帰職の歎願の件を相談したところ、一同承知、調印などの件を打合せ、また、出府人の件は、林長左衛門が引き受けた。費用は、まず今回は私(丹下)より差し出す。あとは、追々一同からご協力頂くつもりである。今晩は皆々泊る。ただし居合惣兵衛と沼尾清兵衛の2人は今晩帰る。

  23日 晴
 根本寺の和尚が来た。今朝、上郷の者が帰る。内塙伊右衛門が1人残り、願書を書いて渡した。順に村を回り25日までに取り揃えるつもりである。出府は29日の相談である。
 今日、下郷の
・下幡木(村)平左衛門
・下幡木(村)甚五兵衛
・平泉(村)勘兵衛
・賀(村)木之右衛門
・筒井(村)七右衛門
の5人が参上した。筒井(村)十左衛門は病気ということだ。平井三郎左衛門・神野伊右衛門・木滝内蔵之助・山之上権右衛門ら一同が同席。昨日決まった件を申し伝え、さて添簡(添え状)をお願いしようと神野(当祢宜)のお考えを伺いに、内蔵之助・三郎左衛門の2人を遣わしたところ、神野にて聞かされたことには、「(旧家臣)一同の嘆願の趣旨はごもっともですが、(鹿島神宮の)社中よりも願い出ているところですので、かえって堀之内(丹下)のためになりません。添簡の件は、お出しするわけにはいきませんが、私ども(会所)へ一同から願書を差し出し下されば、すぐに御奉行所へ差し上げるよう、取り計らうつもりです」と、申し聞かされ、両人は、「その旨を承知しました」と挨拶し、帰ってきたとのことで、一同も同意し、両所・年番へ願い出ようというところ、私の考えでは「そのような例はこれまでなく、特に費用の件などどのように相談されるか予想がつかず、まずはしばらく見合わせ、藤四郎祢宜が帰村した際には、それを理由にして添簡をお願いし、添簡が頂けないのであれば、直に願い出ても構わないであろう」という旨を一同へ申し伝え、そのように決定した。今晩は深夜まで相談に及んだ。

  24日 晴
 今朝、一同で昨夜の相談が決着し、もっとも帰職願いの件は、一同で調印しておくのが当然であろうという事になり、下郷の調印の件は、名前のみ記入して渡した。上郷の調印についても、合わせるつもりである。下幡木村平左衛門へ両方添えて遣わした。その他もいろいろ相談。加えて城山開発の件も聞いたところ、一同相違ないとのことである。一同は夕方七ッ時(午後4時)頃退席した。神野(当祢宜)へ三郎左衛門・内蔵之助の両人が出て、「道理を気にして、まずはしばらく(嘆願は)見合わせます」という旨を申し出たところ、承知の挨拶であった。

  25日 晴
 神酒を献上した。
一、今朝、上郷へ廻状を出した。決定事項が変わった件を申し遣わした。林長左衛門へは、私より別紙を遣わした。山之上権右衛門へも書面にて、端午の節*1に手違いがあった事などを申し送りした。塙伊右衛門へも書面を添えて申し伝えた。人足2人で廻状を2通にして遣わした。

注釈

*1  端午の節…鹿島神宮境内で旧暦5月5日に節句祝いの一つとして行われる流鏑馬は、鎌倉以降惣大行事家の役儀となっていた。江戸時代は旧家臣の主なるもの5人が毎年交替で射手を務めていたが、当年の端午の節は丹下が鹿島に戻ってきたばかりで、射手の決定の際に手違いがあった。​

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